プレジデントに突っ込み(続き)
昨日の続きです。
そこそこ年収があっても、貯蓄がないことや、破産の可能性があることを示し、散々危機感を煽った後の、彼らのいうところの、「解決例」についてです。
“「新・サラリーマン富裕層」の成功哲学”と題して、いくつかの成功例が出ています。
最初に「サラリーマン大家さん匿名座談会」というコーナーがあり、収益不動産を持っているサラリーマンの方たちの、「突っ込みどころ満載」の「羨ますぃ~い(笑)」話が読めます。
編集部からそれぞれの方の不動産投資歴、時価総額、元手を質問されての回答は、
A氏:2年、3.5億、3千万
B氏:3年、2億、2千万
C氏:0.5年、1.5億、350万
D氏:1年、3千万、2千万
あ~あ・・・
で、皆さんの利回りは10%ぐらいだそうです。
すると編集部「そうなると、(中略)不動産の利回りで十分暮らしていけるということですよね。」らしいです。この編集部の人は10%全部手元に残ると思ってるんですかね???
さらに、彼らの面白いコメントが次々と・・・
・ (億単位の借り入れに対する抵抗感について聞かれて)不思議な
ものでだんだん慣れてきませんか?なんていうか億って単位が
怖くなくなってきたというか。ある意味で麻痺しているのかもしれ
ないけど、「100円は大事だけど、億は怖くない」みたいな感覚が
僕にはあるなあ。
・ いいほうに解釈しましょうよ。以前は軽自動車しか運転できな
かったけど、いまはフェラーリも運転できるようになった-----
とか(笑)。
その他にも、
・ (持ってると無駄に使っちゃうタイプなので)退職金1000万円を
そっくり寄付しちゃった
・ 余裕ができたら財団をつくりたい
・ 長野と東京、カナダに家を持って、行き来しながら暮らして
いこうかなと思う
・ 一棟だけじゃなく、一街区まるまるデベロップしてみたい
と、言いたい放題(笑)。こうなると、もうネタとしか思えないですよね。
こういうおめでたい人が、不動産投資で視野が広がり、「確かに数字には強くなりましたね。」だそうです。
この人たちは、不動産のような流動性の低い資産に、そんなにレバレッジ(最大の人で43倍)をかけて、何とも感じないのでしょうか。長い目で見ると、人口減少による家賃の下落リスクや、空室リスクがあると考えないのでしょうか。それに記事には出てきませんが、ちゃんと「固定金利」で借りてるんでしょうかね?
殆ど借金で買ってるのに、全部自分のものになった気分で、借入金の元本や金利を払わなれけばならないことすら、意識の中から飛んでいるのではないでしょうか。
収益不動産経営なんて、そんなに儲かるものではないですし、この程度の金融知識・不動産知識の素人が、片手間で簡単にできるものではありません。
成功している不動産オーナーには、例えば僕の知る限り以下のようなタイプの人がいます。
・ 一見ボロ物件だが、建物の構造はしっかりしている物件を、きちん
と見極めて安く買い、できるだけ金をかけずに内装・外装をきれい
に改装する。そして、いい物件に仕上げて価値を上げ、それに
よって収益利回りを大きくする「再生型」のオーナー
・ 入居ターゲット層を絞りこみ、それに合う場所の土地を指値して安く
買い、独自の仕入れルートでイタリア風内装などの材料を安く仕入
れて、ターゲット向けの建物を建て、さらにイタリア家具を配置して、
付加価値を高める。そうして価値に見合う家賃をもらうことにより、
収益利回りを大きくする「付加価値型」オーナー
などです。
つまりプロとしての確固としたノウハウを持ち、本格的な「不動産事業」として行っているからこそ、長期に渡って成功している訳です。
素人に対する「不動産投資指南家」として金森重樹氏が有名です。この人は「真っ当」かどうかは別として、すごく頭がイイと思います。
この人はフルローン提唱者ですが、彼によると、ネット利回り8%の物件に投資すると、月々のローン支払いや、管理費、税金などを引いた、手元に残るフリーキャッシュフローは、せいぜい良くて1.5%ぐらいだそうです。つまり1億の物件なら、年間150万円しか手元に残らない計算です(それもこれまでの超低金利前提ですよね)。
ですから彼は不動産投資を煽る一方、「儲かるからではなく、とにかく不動産が好きだからやるんだ」という主旨のことを述べています。
フルローンでレバレッジを思いっきり利かせて、過大と思えるリスクを背負う事に対して、彼が書いているコメントを紹介しましょう。
「所詮人間糞袋」です。
意味わかりますか?
僕は個人的にはこの考え方は、男気があって好きです。
しかし、世の多くの「サラリーマン大家さん」や、それを目指す人たちは、それをわかった上で、やっているのでしょうか。わかっているなら問題ないですけどね。
彼も実際に不動産投資をしてはいるらしいですが、僕が考えるに、現在の彼のビジネスモデルは、DVD販売、セミナーなどのコンテンツ事業、そして「不動産仲介業」がメインで、それらの事業で、相当に大儲けしているのではないでしょうか。
ここ何年か、サラリーマン大家さんなどと言われて、不動産投資ブームのようですが、無知な人たちがExitの対象にされている気がしてなりません。
いつの時代もババ抜きゲームの敗者は決まっているのです。
PS)
プレジデントの特集では、不動産オーナー以外にも、何人か成功者とされる人が、写真入りで出ています。
家計から年間100万円コストカットする人を紹介した「節約こつこつリッチ」、ネットで牡蠣を販売する人や、Web製作会社を起業した女性社長を紹介する「勉強でレバレッジ・リッチ」などです。
はっきり言って、どれも全然イケテナイです(笑)。今更ネット販売や、Web製作って何なんでしょうね。探せばもうチョットましなネタはあるでしょうに。
そういえば、儲かりもしないWeb製作屋で最も先行していた、「頭の悪いパソコンオタク」の会社を、無理矢理上場なんかさせたもんだから、より儲かる「犯罪に手を染めた」例がありましたよね(笑)
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コメント
通販大家さんの金森氏は不動産の指南は主ではなくて、ターンアラウンドや、最近はホテル再生事業やってますね。
http://takasaki.keizai.biz/headline/111/index.html
http://www.takasaki-hotel.com/
シティーホテルも買収して、ウエディングも手がけているようです
あと、行政書士事業も10億円を超えているようです
彼は、当然書籍を出した時点では、その業界でのエグジットは終わってますよ。
投稿: バンケット | 2007年7月 5日 (木) 12時19分
バンケットさん
確かに最近は仲介物件もなかなかないようで、一時パチンコホール投資とかも言ってたようですね。
投稿: bigapple | 2007年7月 5日 (木) 12時30分
>収益不動産経営なんて、そんなに儲かるものではないですし、この程度の金融知識・不動産知識の素人が、片手間で簡単にできるものではありません。
本当にそう思います。
付加価値型のオーナーですが、
まぁ、タイミングが良かっただけですね。
いい土地が安く手に入り、
不動産投資ブームより以前に大きなお金を
低金利で、調達できた。
ユーロの安い時に、
イタリアの友人と知り合えた。
今では、もう、同じようなものは
できません。
10年ほど前に比べて
土地は、3倍~5倍。
建築費は、4割りアップ。
で、家賃は、あまり変わりなし。
合うわけないです。
とにかく不動産が大好きっていうのは
ありますね。
だから利回りだけ先行の不動産の話する
人たちは、苦手でして、
周りから消えました。(笑)
投稿: はま | 2007年7月 6日 (金) 00時58分
はまさん
コメントありがとうございます。
実際の「付加価値型オーナー」にご登場いただき、説得力も増しますし、箔もつきます(笑)
いつもシンプルな語り口のはまさんに、こんなに気合の入ったコメントをいただけて、すごく嬉しいです。
投稿: bigapple | 2007年7月 6日 (金) 01時19分